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就職について具体的に動き出したのは大学3年生の冬のことでした。それは、大学主催の民間企業との就職面接会に参加したのですが、当時は就職に向けて、どのように動き出せばいいのか右も左も分からない状態だったので、ほとんど自分の立場も考えずにただただ履歴書片手にリクルートスーツを身につけて、手当たりしだい企業のブースを当たっていきました。
しかしながら、これは大きな失敗であったことにすぐ気がつきました。今考えれば当然のことなのですが、この日来ている人事の方は五体満足の大学生を前提に面接しに着ているのですから、私のような白い杖を持った障害者なんてハナっから眼中にないのです。当然のことながら、私が席につくや否や「障害者には難しい」という話を延々とされた挙句、履歴書着き返されておしまいでした。
これは自分のやり方が間違っていたと反省し、大学の進路指導課に相談したところ、ハローワークで身体障害者を対象とした就職面接会を行っていると聞き、即東京都内のハローワークに問い合わせて、就職面接会の日時と会場について教えてもらい出向きました。
今回は対象が「障害者」となっているのだから、前回のように門前払いされることはないだろうと安心し、後は自分の実力しだいとはりきっていましたが、結論から言えば門前払いする企業も少なからずありましたし、面接しても「自分ひとりで通勤できますか?」とか「どのようにして文書作成するのでしょうか?」など直接仕事の内容には関係のない話ばかりで、こちらの志望動機や長所を充分にアピールすることができずあまり前向きな面接とは言えませんでした。もちろん、数日後には面接をした全ての企業から不採用通知が届けられ、就職活動をしていた3年間に100を超える不採用通知をいただくことになりました。
何かの統計で身体障害者の中でも重度の視覚障害者の就職率は非常に悪いようなことを聞いたことがあります。数多くの企業と面接をする中で感じたのですが、看板としては「身体障害者を対象とした」とありますが、いわゆる健常者がこなしている業務に対して差し支えない程度の障害、もしくは少しの工夫でカバーできる障害と判断された人、いわば企業にとって都合のいい障害を持っている人にしか関心を持たないところが多いのかもしれないと思わされました。
そして本来は雇用促進を図らなければならない立場のハローワークの職員の中にも「全盲の就職は難しい」と、相談した次の瞬間には言われ突き放されることもありました。余談ですが、障害を持ったからには恥と怪我と心の傷は恐れてはならないとは思っていますが、この就職活動の時期は不愉快極まりないものでした。
自分自身、企業の方に認めてもらえるために自己分析をしてビジョンを明確にしたり、一般常識を身につける努力は必要です。同時に、企業側にも、障害を持ちながらも職場でその人の実力が発揮できるための環境作り(ソフト面も含めて)や個々の障害についての知識を得る必要があります。しかしながら、個々それぞれが努力しても一致することができなければ意味がないし、またどのように取り組めばいいのかその方法がわからなければ、私が最初にした失敗のようなことも起こりかねません。障害者雇用に必要なものは、両者がマッチングするためのコーディネート・メディエート・アドボケートする第3者が重要であると痛切に感じさせられました。
私の場合、「一般事務」という職種から文書作成や管理といったことが業務の大半を占めます。昨今パソコンの飛躍的な不及により電子媒体でのやり取りも浸透しつつありますが、やはりまだまだ職場内では紙による情報が一般的です。
視覚障害者の場合、ここが最も高い壁となっています。書くことに関してはパソコンに音声スクリーンリーダーを併用して使うことにより、活字常法として情報を発信することができるようになりましたが、紙に書かれた活字を読むことになるとかなりの困難を強いられることになり、どうしても外部からの常法を処理・収集・分析することが難しい立場にあります。
そこで重要なのが「ヒューマンアシスタント」の存在、人的サポートの活用にあります。私の場合、週5日間、一日8時間30分、私の事務補助としてアルバイトの方が様々な場面でサポートに当たってくれます。ただ、専属と言うわけではなく通常のアルバイト職員の業務の中に「全盲職員の補助」が割り当てられており、他の雑務と併用しています。
具体的には、課内での回覧文書や、担当業務に掛かる報告書や統計データの代読や、決定書等の代筆をはじめ、私が作製したワードや、エクセルの誤字脱字やレイアウトの修正や必要書類を膨大なファイルの中から探してもらうなど、私に課せられた業務がスムーズに進行するような援助をしております。
それだけではなく、例えば私が課内にかかってきた電話を受け、「○○さん、××からお電話です」と呼びかける場面が多々あるのですが、その際相手の方が「はい」とでも言ってくれるのならこちらも安心できるのですが、周りも忙しいため時としてそこまで気が回らないことがあります。そんなとき、補助の人が「取りました」とか「今席外しております」と一声かけてくれます。
このように、単に「事務補助」として決められた業務を行うのではなく、私の目の代わりとして、周囲の状況や雰囲気などを言葉にして伝えてくれるので、こちらとしても安心して物事を進めることができます。
最近では、この「私の補助」という雰囲気が少しずつではありますが課内に広がってきておりまして、例えば先ほどのように電話を取次ぎした際、他の職員の方から「今席外しているよ」と声を発してくれるようになりました。また、アルバイトの方が別の業務に当たっているとき、他の職員から「回覧文書読んであげましょうか」なんてことも珍しくなくなりました。
「人的なサポート」とは、何も特別に新たな人を雇用して障害者の援助をするだけではなく、ひとつの組織として、社員一人一人が補助をする姿勢があればそれで十分障害者でも自分の担当業務をこなすことはできるのです。
そもそも「仕事」とは自分ひとりでやり遂げるものではなく、複数の人が絡まりあって達成できるものであって、そう考えれば私の言っていることは別に特別なことでも何でもないことが理解していただけると思います。
視覚障害者は「情報障害者」と呼ばれることもあります。その理由は、一般的に私たちが外部からの情報として捉えている体の器官の大部分が目からであり、視覚からの常法が捉えることが困難になると、必然的に情報を得にくくなります。
しかしながら、仕事をする上で文書の作製・整理・保存は必須となり、これを無くして一般事務職として働くことはできません。私たちの場合、パソコンは「スクリーンリーダー」と呼ばれる音声ソフトをパソコンにインストールすることにより、ディスプレイ上に表示された文字情報や、自らがキーボードで入力した文字を音声で確認することができるようになりますので、これさえあれば企画書や資料の作製が可能になります。
私の職場の場合、ワードとエクセルを頻繁に利用するので、主に文書作成にはこれらのソフトを使います。ただ、音声ソフトを併用すれば他の方と同等に使えるようになるというわけではなく、やはり自らも技術を習得する必要があります。私の場合、表や文書のレイアウトを整えるというのが苦手で、自分ではきれいに整えたつもりでもいざ見てもらうと崩れてしまっているということは珍しくありません。そのような場合前回お伝えしましたように、補助の方に修正してもらうのですが、どうにかレイアウトだけでも自分ひとりの力でできるようにならないかと考えております。
今就労に求められているひとつがパソコン技能であり、視覚障害者を対象に一般事務に活用できるレイアウトの整ったビジネス文書の作製をサポートしてくれるところがあればと切望するところです。
今までは「書く」ということに焦点を当ててきましたが、パソコンを使うことにより「読む」・「情報を得る」ことができるようになります。具体的には、OCR(スキャナー)によって活字の文章を読むという方法です。
これは印刷物が対象で手書きの文書には対応できませんが、ある程度書かれている内容を把握するということではかなり重宝しております。また、作製したワードやエクセルのデータがあれば、それを提供してもらいパソコンで読むことをしております。これならば一言一句間違えずに内容を把握することができるので、他の職員の方には私に資料等を提供する場合、別途フロッピーディスクなどで元データを提供していただくようお願いしております。
そして、インターネットを使えば、自ら情報を収集することができるようになります。私の場合よく厚生労働省のホームページを見ることがあるのですが、インターネットを活用することにより、自分の仕事に必要な情報を仕入れたり、不明な点を検索にて調べたりと、自分で調べられるので仕事もスムーズに進められることができます。
私の場合、他者の力を借りる場面が多く、また必須でもあるのですが、やはり自分ひとりでこなせることができるのが円滑に仕事を進めるひとつの手段であると考えます。電子化が進み、職場にパソコンが普及した現代に置いてパソコン技能を上げることが就職に繋がる要因になるとも思います。 |